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AI時代の今こそ「寺子屋」に学べ。落ちこぼれを生まない教育法とは?

有名中学入試問題で発見する「江戸時代の日本」④渋谷教育学園幕張中学校〈後編〉

■あり先生の提言

 ところで、私自身、頼まれて塾の先生もしています。小学生~高校生まで受験生ばかりを教えています。そこで肌で感じるのは、現代の子供たちは小学生にして既に「すぐ役立つこと」「将来、仕事や海外で本当に役立つこと」を知りたい、教えてほしいと思っているということ。

「あり先生、学校で教えることって本当に生きてて役立つの? 俺、こういう仕事したいと思ってるんだけど、これとこれは絶対いらないのわかるんだよね」

「将来的に、全部こんなのPCやスマホ、AIたちがやるのに、どうしてやらなきゃいけないの? それよりもっと、今使えることや、海外に留学したりするときに知っておかなきゃいけないことを教えてくれなきゃ、学校の意味ないよ」

 何事も「基礎、最低限の知識」は大事です。そして「そのために」学校が存在し、教えるはずです(そうでなければ存在意義自体が問われてしまう)。

 しかし、実際はどうでしょう。教えるべきことを教えられているでしょうか。

 例えば「ことわざ、慣用句」など、中学生になったら学校でやること/高校や大人になったらよく使う知識を、小学6年生の子たちは学校で教わることはありません。中学に入って初めて教わるのです。

 公立中学の場合、中学生1年生になったとき、同じクラスでもそこで初めて学ぶ子供と、中学受験を経験していたり、「他校の受験に失敗してやって来た子たち」は全員既に「塾で教わって」知っている。

 小学校では、宿題や小テストはありますが「成績をつけるための試験」を行いませんよね。しかし卒業し、中学校に入学した途端、定期的に「成績のため」の試験があります。よって、入学式で「はじめまして、こんにちは!よろしくね」の瞬間に、各生徒達の学力に既に差が大小あれど、ついてしまう。こういった恐ろしい現実を突きつけられるのです。

 そしてそのまま学校が始まるため、初めての授業や試験でクラスメイトたちとの差を実感したり、ダメだと悲しくなったり、その差が縮まらない場合も少なくないわけです。

 中学校は小学校以上に先生たちも教え方に個人差がありますから、急に出来るようになるか、わかりにくくて脱落していくかは始まらないとわかりません。

 多くの生徒たちが、こういった「不公平」を受験前から予測して心配しています。まだ中学受験まで何年かあるような学年の小学生でも、この矛盾に子供ながらに気付いています。

 現代では、 世の中のシステム的に、学校のシステム的にも難しいですが、本当は寺子屋のように「その子に合わせた勉強を教える」のが、その子が伸びる最速の方法の一つなのでしょう。

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瀧島 有

たきしま あり

江戸文化歴史研究家

江戸文化歴史研究家。学校や教科書が教えない、江戸の町の武家・庶民の真実の姿、風俗や文化、食べ物などを研究する傍ら、江戸文化勉強会「平成江戸幕府」を主宰。フェリス女学院大学、内閣府クールジャパン・アドバイザリーボード・メンバーなどを経て、法政大学文学部史学科に在学中。著書に『あり先生の名門中学入試問題から読み解く江戸時代』など。


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